2014年9月14日日曜日

安達太良山(1699M)【福島県】

日程:8月14日(木)~8月15日(金)

メンバー:単独

天候:1日目→曇り、2日目→曇りのち晴れ

アクセス:自動車

コースタイム:
1日目
11:51あだたら高原スキー場駐車場-(あだたら渓谷自然遊歩道)-12:20勢至平・五葉松平分岐-(五葉松平コースを目指すも取り付きが良く分からず引き返し)-12:45勢至平・五葉松平分岐-13:39峰の辻分岐-14:28くろがね小屋

2日目
6:11くろがね小屋-8:05山頂-9:16五葉松平(標識)-9:55あだたら高原スキー場駐車場

感想/記録:

阿多多羅山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。


 誰もが国語の教科書や資料集で一度は目にした高村光太郎の詩。昔からなんとなく心の中にあって、ふと思い出すことがありました。福島の山にも登ってみたかったし、じゃあ「ほんとの空」を見に行こうじゃないかというわけで、お盆休み中に初・福島遠征を敢行してまいりました。今回の登山では二本松観光とくろがね小屋泊も目的だったので(というよりそれがメイン)、日帰りコースを泊まりでやるというゆったりプランとなりました。振り返ってみると今年の登山は大分余裕を持った日程が多かったなあ。仕事で疲れているからかな。
 もう一ヶ月も前なので記憶が曖昧ですが、確か6時台に自宅発。例によって高速は回避したためひたすら国道4号で北上。県境を越えたところで一度コンビニ休憩を入れ、そこから更に北上して二本松市へ入りました。
 二本松といえばやっぱり二本松城!



 
 入口に二本松少年隊の顕彰碑がありました。
 現在は城址公園として市民の憩いの場所となっているようです。今回訪れたときはお盆中&暑さもあってか殆ど人はいませんでした。天守台跡からは市内が一望でき、晴れていればさぞや気持ちが良かろうと思いました。
 
 
 お昼は市民交流センター内の杉乃家さんへ。浪江焼きそばの名店です。センター自体は比較的新しく、良くも悪くも公共施設的クリーンさ・無機質さのある建物なのですが、一歩中に入るとかすかにソースのいい匂いがしてきます。なんとなく不思議な感じ。11時の開店とほぼ同時に入ったので、並ぶこともありませんでした。


 元々浪江町でお店を開いていましたが、原発事故で避難し、ここで営業を再開されたようです。箸袋は前の住所のままになっていますね。
 この焼きそば、うどんかと思うような極太麺で超モチモチしているのです!ボリュームもあり、これだけでかなりお腹いっぱいになります。いや~美味しかった。
 さて、ご当地グルメを堪能していよいよ安達太良山へ。スキー場の駐車場に駐車し、身支度を整えていざ登山開始。
 なお、元々の計画では1日目にゴンドラは使わずに五葉松平をとおって山頂まで行く予定だったので、スキー場を突っ切るか自然遊歩道を行くか考え、変化に富むコースのほうが楽しいだろうなあと後者を選択。

 
  「渓谷」の名前のとおり谷あいの沢筋を辿っていくコースで、途中何度か両岸を橋で渡り返しながら進んでゆくと、勢至平と五葉松平への分岐が現れます。当然、当初の目的どおり五葉松平方面を選びます。遊歩道を出てスキー場の中へ入り、雑草の生えた粘土質の傾斜地を黙々と登っていくものの、拓けた場所で踏み跡が明確でないためイマイチどこが登山口なのか分からず、リフトの降り場まで来て若干不安に。進むべきか退くべきか迷いましたが、不安に思ったら引き返せという鉄則に従い、一日目の登頂はすっぱり諦めて分岐へ引き返したあと、改めて勢至平経由でくろがね小屋へ向かうことにしました。これで大分時間をロスしてしまいました・・・。
 勢至平へ出るまでの道はやや急な登りで旧道と馬車道の2つがあり、合流箇所ではコンディションや気分に合わせて好きな方を選べます。旧道が一般的な(岩あり根っこありの)登山道、馬車道は林道のためよく整備され歩きやすい。ちなみにスキー場で体験した粘土質の土壌はどうやら安達太良山特有のものらしく、いつ降ったものか雨に濡れていた旧道は非常に滑りやすくて予想外に苦戦しました。登山靴にも泥がこびりついたり。
 
 勢至平に出た後はほぼ平坦でさくさく進み、午後2時半頃くろがね小屋へ到着。
 
 
 斜め屋根がシャレオツな山小屋です。
 さあ、いざチェックイン!・・・しようとして大変なことに気づきました。
 
 なんと、財布を車の中に忘れていた\(^o^)/
 
 あり得ない失態に一瞬真っ白になる私。しかも管理人さんによると、くろがね小屋は県営のためレジの会計をきちんとチェックされるようで、ツケも利かない模様。結局、管理人さんのポケットマネーから立て替えていただき、後日ふもとの観光協会で代金を支払うこととなりました・・・。いや、その節は大変お世話になりました。なんとお礼を言ったら良いかわかりません。
 ところで、普通山小屋というと夏シーズンはアルバイトを雇うほど人手が必要なイメージがありますが、このくろがね小屋は宿泊客が(確か)30人までは一人で対応しなければならないそうで、この日泊まった二十数人分の夕飯と朝食の仕込み、配膳、片付け等(多分風呂掃除とかも)は管理人さんが全て一人でやっておりました。これ、とんでもなく大変だと思いますよ。ご迷惑をおかけした代わりに私も配膳をお手伝いしていたら、他の登山客の方も自主的に手伝ってくださいました!やっぱり山に登る人はいい人が多いな~とほっこりした気分になりました。
 
 
 
  私が泊まった部屋から。間仕切りはカーテンのみ(右上に写ってるような感じ)。畳敷きで部屋の両端に板が敷いてあり、開けると中に靴を入れるスペースがあります。2階建てですが、2階は更に部屋が2段に分けられ、実質3階建てのような造りです。私が泊まった部屋は3階でした。部屋は全て相部屋ですが、今回私は他のお客さんと一緒になることなく、一人でのびのび使うことが出来ました!ラッキー。
 着いて早速お風呂へ。岳温泉の源泉を引いているという非常に贅沢な温泉なのですが、白濁した硫黄臭のする酸性泉で、温度もちょうどよく、とっても気持ちよかったです。疲れた体が癒されました。なお、朝は朝食の仕込みで水を使うため、朝風呂はご遠慮くださいとのことでした。
 くろがね小屋で有名なのが夕飯(17時半)のカレーライス。なんでも歴代の管理人さんが引き継いできたメニューなんだそうだ。客が少なかったからか(?)希望者にはおかわりサービスということで、私も2杯頂きました。更にラッキー。カロリーは気にしない。
 翌日の朝食は5時半。ご飯、味噌汁、牛筋の煮込みが少々、あとは海苔と温泉卵だったかな?漬物もあったかしら。こちらは山小屋らしい、素朴で質素な朝食です。
 6時すぎには山小屋を出発。
 
 
 2日目の天気はこんな感じ。昨日以上にガスで視界不良。登山道がよく整備されており、至るところに分かりやすくマーキングやロープがあったため、大きく道を外れることはありませんでしたが、見晴らしが利かず周囲の様子が分からないということがこれほど心理的圧迫感を与えるものなのかと思いました。ガレ場で進む方向が分かり辛いような場所は特に怖かったなあ。一度、峰の辻で矢筈森方向に行きそうになり(そっちに行っても頂上は着けるんだけど)、晴れてればこんなことはないんだろうなあ、天気一つで山の難しさって変わるんだなあと改めて思いました。
 
 
 
  こんな感じの視界だもの。
 とりあえず、頂上に到着して写真をとってはみたものの・・・。
 
 
 
 もはやここがどこなのかすら分からない・・・。
 む、むなしい、むなしすぎる。ほんとの空なんてどこにもないよ智恵子・・・!とやるせない気持ちにかられつつ、先に到着していた群馬から来たおじさまとしばし歓談。ちょうど上の写真の後ろに薄ぼんやりと小高い山が見えると思うのですが、ここが本当の山頂?ということで、せっかく来たし登ることにしました。
 
 
 
  山頂には「八紘一宇」と彫られた石碑が。さて、この四文字熟語を見てすぐにピコーンと来たあなたは四字熟語マニアか、昭和史マニアか、軍オタかと思われます。
 この石碑のいわれは後ろに彫られた「紀元二千六百年記念 昭和十五年八月安達郡青年団建之」という文で分かります。八紘一宇という言葉は「世界を一つの家とする」というような意味合いで、かつて大東亜共栄圏とか大東亜新秩序建設とか、そういう思想的風潮の中でスローガンのように使われた言葉なのですね。紀元二千六百年というのはもちろん西暦ではなく皇紀数えによるもので、この節目に当たる昭和15年には記念事業が全国的に行われました。この石碑もそのなごりだと言えるでしょう。ちなみにゼロ戦の名前も「2600」年に採用されたことが由来なんですよね~。面白いよね~。
 
 閑話休題。
 
 遮断するものが何もない頂上は強風と水分を含んだ湿った雲の真っ只中で、めがねはすぐに水滴で視界不良になるし、髪もびしょ濡れだし、それはそれは大変な状態でありました。ただ同時に、上を見上げると日の光と青空がかすかに見えることに気づきました(上の「八紘一宇」写真でも、左上がやや青みがかっています)。
 いずれにしてもこの状態ではまた降りるのも嫌なので、しばらく岩陰で休むことに決めました。その間に、みるみる周りの景色が変化していきました。
 
 
 強風に押し流される雲が徐々に下降し始め(ちょうど、水位が下がるように)、青空が覗きました。
 
 
 周囲の山々も見えてきました。
 
 
 なんだか飛行機からの景色みたい。
 
 
 
 気づけばそこには雲海が!!2000Mに満たない山とは思えないような景色でした。この時点で風も落ち着き、爽やかな空気が満ち、穏やかな日の光が降り注ぐようになりました。
 
 
 
  鉄山方面。もののけ姫の世界みたい!!後ろの穏やかな山容の山は東吾妻山。
 
 
 船明神山方面。後ろに顔を出してるのが磐梯山!
 本当に、この劇的な天候の変化には感動しました。しかも大方晴れてきた頃に一人登ってきた以外は私しか頂上にいなかったので、まるで世界の一番高い場所にたった一人でいるような気分になりました。2000M以下の山なのに!(大事なことなので2回目)
 なんというんでしょう、ガスの中ひとりでとぼとぼ登っていた時の寂しさとは違う、すがすがしい孤独感とでもいうか、とにかくとても気持ちがよかったです。
  
 
 山頂から降りてみれば、そこにはすっきりと透明な青空が。
 
 
 
 余韻を残しながら、下山開始。
 
 
 いや~、それにしても出発時が夢のような見事な晴れだわ。
 そうそう、帰りはゴンドラに乗ろうかなあとも思っていたのですが、よく考えたら財布がないことに気づき、ふもとまで五葉松平ルートで降りることにしました。1日目に登り口が分からず諦めたルートです。ルーと自体ははっきりしており、歩きにくいということもありませんでした。
 
 
 さて、五葉松平ルートからスキー場へと出てきて振り返ったところ。私はリフトの方へ行ってしまったのですが、左の茂みの方へ行くのが正しかったようです。分かり辛いわー。それともリフトの方からも合流できるルートがあったんでしょうか。
 この先はスキー場の中をふもとを目指して降りていくだけなのでラクチンです(ちょっと滑りやすいけど)。岳温泉の定食屋さん「成駒」でガッツリとソースカツ丼を食べ、消費したカロリーを摂取して(・・・)帰路に着いたのでした。
 
 そんな感じで、振り返ってみればとっても良い思い出が出来た今回の山行。
 安達太良山の「ほんとの空」は胸に染み入るような美しさでした。